『こころ』 夏目漱石
言わずと知れた名作、『こころ』
教科書で読んだ人も多いでしょう。
この小説をどう読みましたか?堅苦しい文学小説?
私も読む前は堅い文学小説と思って構えていたのですが、実際読んでみると面白い小説でした。
けっこう、ミステリーというかエンターテイメント性があるような…
実際、「こころ」という小説は1914年に新聞連載されていたものですし、インターネットはもちろんテレビもラジオもない当時の人達を楽しませるためにも書かれているように思います。
ただ、ミステリーとして読むには多くの人が教科書で最後のオチを知ってしまっているので楽しさが半減しているなあと。
私はいつもこのオチの部分だけ教科書で読ませてしまうのはもったいないと思ってしまいます。
感想
私がこの小説を読んだのは高校生の頃。ちょうど来週から現代文の授業で読み進めていこうというタイミングでした。
教科書に載っているのはもちろん下の「先生と遺書」の最後の部分。
このままではオチだけ知ることになると思い慌てて読み始めました。
上 「先生と私」
読み始めてみると「先生」の陰のある雰囲気と話したがらない過去が気になってどんどん読み進めることに。
- 誰のものかは語られない墓参り
- いつも冷静なのに恋愛についてはあつくなるところ
- 世捨て人感
どうも過去に何かがあったらしい雰囲気。まさか過去に人でも殺しているサスペンス展開なのかと読んでいる途中は思ったぐらいでした。
こういうところが少しミステリー要素があるように感じました。
「私」が「先生」に惹かれるのもわかる気がします。
中 「両親と私」
ここでは父の病により実家に帰った「私」について書かれています。
大学を卒業してとくに就職先も決まっていない「私」に将来のことを心配する親。
田舎でずっと暮らしてきた両親と価値観が変わっていて違和感を感じたり、のんびり過ごす実家に飽きたり。
そうしているうちに時代が大きく変わる。
この明治という時代が終わったという雰囲気は当時の人達でないと味わえないものだなあと読むたびに思いますね。
最初に読んだ頃は令和のれの字も出ていない平成の頃だったので、もし平成という時代が終わったときにこれほどまでの変化が個人に訪れるものなのかと思ったものです。
しかし、明治という時代を考えれば文明開花やら日清戦争・日露戦争と日本にとっては濃厚な時代になっています。これほどの出来事があったならひとつの時代が終わることに喪失感もあるように思います。
こういう当時の空気感を味わえるところもこの小説の好きなところです。
下 「先生と遺書」
一番有名なところですよね。「先生」からもらった手紙。
いくら「先生」の過去を知りたいと「私」が思っていてもなんというタイミングでこんな手紙が届くんだと思いました。
ここで「先生」の過去が明かされていき、「先生」がなんとも言えない独特な雰囲気をもつ理由がわかっていきます。
この「先生と遺書」では「先生と私」から謎だった「先生」の過去はわかるし、きっかけとなった出来事の当事者である「k」の心情も読んでいけばわかるのですが…
ただ、私はどうも「お嬢さん」の気持ちというものが気になって仕方がないのです。なかなか何を考えているのか分かりにくいような…
それに、当事者の1人であるはずなのにずっと置いてきぼりになっているし。
本を読み終わった後いったい先生の奥さんはどうなるのかと気になってしまいます。
この小説は何度も読んでいますが、読むたびに新しい発見や感じ方をします。何度読んでも楽しめるのが名作というものなのかもしれませんね。