時をかける少女 筒井康隆
何度も映像化されている『時をかける少女』
初版は1967年とかなり古いSF小説。世代によって想像する映像作品が違うらしいですが、私は細田守監督のアニメ映画版を思い浮かべます。
以前から気にはなっていたこの小説。
今回はKindle Unlimitedにあったので読んでみました。
感想
原作小説の初版は1967年とかなり古い作品。この古さで読むのを躊躇していたことを後悔しました。
もちろん時代を感じる部分はあります。主人公の名前は和子ですし。出てくる言葉も少し古くさい。
でも、何度も映像化されるだけの魅力がありますね。
物語の根っこの部分は時代を経ても楽しめると感じました。
例えば
- 主人公がタイムリープの能力を身につけてしまい悩んでしまう場面
- 大切な人のことを忘れてしまう切なさ
- 人を待つことになるもどかしさ
青春小説として普遍なものかと思います。
また、SF部分も全然古さを感じない。
- 未来世界では科学技術が進み、学校教育が高度化
- 長くなった教育期間により晩婚化が進む
むしろ、今現在や近未来を予見しているかのようですね。
この「時をかける少女」今回読み始めるまで知らなかったのですが、短編だったのですね。何度も映像化されているということだったのでてっきり長編だと思っていました。短編でサラッと読める分、最後の余韻がより際立っているように感じました。
映画版との違い
いくつか違う点があったのですが、印象的だったのは主人公がタイムリープの能力を持ってしまったことに悩んでいたところです。
映画版の主人公は能力に気がつくとどんどんタイムリープしていきますが、小説版では戸惑い悩んで友人たちに思い切って相談します。そして、変な能力を持って人間じゃなくなったような目でまわりから見られることを嫌がっています。
私がもしもタイムリープの能力を身につけたら能力を活用しようとは思わずに「変な力を持ってしまった」と心配しそうだなあと思うので、小説版の方が共感できました。
表題作の「時をかける少女」のほかの2篇
理由はよくわからないけれど、なんだか怖いと感じるもの。その恐怖を克服しようと中学生の男女が原因となった出来事を探す「悪夢の真相」
気がつくと自分が元いた世界と少し違った世界にきてしまった高校生が主人公の「果てしなき多元宇宙」
どちらも面白い作品でした。